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甘く、あまく、あま~く…?

ブルクミュラーの最初の曲

「素直な心」の一小節目には、

「dolce」という発想用語があります。

音楽用語辞典で調べてみると、

「柔らかく・愛らしく・甘美に・甘く」と書かれています。

「dolce」はイタリア語。

スィーツを意味する言葉でもあります。

ドルチェの意味を覚えることは簡単ですが、

ピアノでドルチェに歌うことは

なかなか難しいですね。

柔らかく、と言われると、

腰のないふにゃふにゃな音になってしまったり。

可愛らしく、と言われると、

音を小さくするくらいしか思いつかない…。

ドルチェは「弱く」ではありません。ましてふにゃふにゃはとても困ります。

こんなときは想像力をうんと使いましょう。

そのものずばり、甘いお菓子を想像してみるのはどうでしょう?

たとえば白黒の音符の一粒一粒が、

色とりどりのキャンディーだとしたら?

透き通った繊細な、宝石のようなキャンディーです。

イチゴ味…メロン味…次はオレンジ…ブルーはミント…

ひとつぶ弾くたびに、あま~い香りが漂って、夢のよう。

こんな小さなケーキはどうでしょう?

一口食べたとたんにお姫様や王子様になれそうな、

柔らかくてうっとりするお菓子…

そう、ドルチェの響きは「うっとりするような」がぴったりですね。

もし甘いものが苦手でも、ほら、つぶらな瞳の子犬!

ホイップクリームのように

ほわんと手の中で溶けてしまいそうな、ふわふわの子猫ちゃんは?

抱っこして、温かくて柔らかな毛に頬ずりしたら…

うっとりしてしまうでしょう?

発想用語は

用語辞典の言葉からどんどん想像して、

自分の感じ方、自分の言葉で

イメージをつかみましょう。

強弱記号も同じです。

「フォルテ」は強く、大きな音で弾く。

「ピアノ」は弱く、小さな音で弾く。

その通り。

でも強弱を「音量」としてだけでとらえないでほしいのです。

強弱は「音色」で表現するものだと考えてください。

たとえばフォルテとピアノが交互に出てくる、

いうのはよくありますね。

こんな時、フォルテは大きく、次はピアノだから小さく…

これではまるで,

オーディオのボリュームを上げたり下げたりしているのと同じです。

これもイメージ、想像力を使いましょう。

何にたとえましょうか?

そう…絵はどうでしょう?美しい風景画です。

フォルテはくっきりと豊かな線で、

手前の景色を描くような気持ちで。

鮮やかな緑に、色とりどりの花もすぐ近くに見えます。

ピアノでは、野原の向こう、

遠くかすむ山々の連なりを描きましょう。

目の前の野原はフォルテで力強く描き、

ピアノは遠くの山や、たなびく雲を描きます。

フォルテは近く、ピアノは遠く…

このように強弱を使って、

音楽に絵と同じ、「奥行き」を出すのです。

強く大きく、弱く小さく、からはそろそろ卒業。

今日からは練習でフォルテが出てきたら、

「どんなフォルテにするのがいいかな…」 と考えましょう。

強弱をこのようなイメージでとらえる時は、

必ず曲全体の雰囲気やバランスをよく見てください。

今お話しした遠近だけではなく、

さまざまなイメージと表現が、それぞれの曲にあります。

先生と一緒に、それらを考えていきましょう。

ピアノは

あなたの心に思い描いたものを映し出す魔法です。

なんにも心を使わずに

ただ指でキーを押していたら、

ことんことん…

こんな木の響きしか感じないかも知れません。

間違わずに弾くことをいつまでもゴールにしていたら、

なんの色もついていない白黒のドレミばかり…

出来上がった曲も白黒で終わってしまうかもしれません。

見るもの、聞くもの、味わうもの、感じるもの…

すべては音楽の材料です。

心を自由にはばたかせて

色とりどりに、生き生きと演奏しましょう。

あま~いお菓子、かわいい子犬、美しい絵画…

さあ、あなたはピアノの魔法で、どんなものを出しますか?

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