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ある日のレッスンから〜音感ってなあに?

先月はソルフェージュについてお話ししましたね。

みなさんにレッスンでやっていることの意味や目的がわかってもらえたでしょうか?

そのお話の中で「音感」(音を覚える)という言葉が出てきました。

「~ちゃんは音感がいい」「音楽が上手になるには絶対音感がなければダメ」…

こんな言葉をちらほら耳にしたことはありませんか?

音感というのは「聞いた音が何の音なのかすぐわかる能力」だと思われています。

特に絶対音感は「ドはドにしか聞こえない=とてもすぐれた音楽的能力・素質である」

というように世間では知られているようです。

果たして本当でしょうか?

実は音感には、6つの要素があるのです。

どれもきちんと説明すると難しいし長くなるので、

今月は来月と2回に分けて、ごくごく簡単に説明していきましょう。

まず音感とは以下の6つに分けられます。

1・絶対音感(絶対的な音そのものの高さを感じる感覚)

2・相対音感(音と音の隔たりを感じる感覚)

3・和声感(いくつかの音が重なり合って生まれる音の表情・色合いとその変化を

 感じる感覚)

4・機能感(音と音の関係・音楽の起承転結を感じる感覚)

5・強弱に関する感覚(音量と、音楽の表情としての強弱を感じ取る感覚)

6・音色に関する感覚

1の「絶対音感」は音を周波数という

絶対的に決まった高さで捉えられる感覚です。

これは生まれつきの能力ですが、絶対音感がなくても、

きちんと調律されたピアノで練習すれば、

標準音高(音楽に用いられる音の高さ。調律で作られる音)が身につきます。

2の「相対音感」は、ある音を基準にして、他の音がわかる感覚です。

聴音でシをソと聴き間違えた時、「ソはこれよ」とヒントをもらって、

その音から高さの見当をつけていくでしょう。

相対音感は練習で誰でも身につきます。

絶対音感がなくてもソルフェージュとピアノの練習に励めば、

とても離れた音程の音がバラバラに出てくるような難しいメロディも

ちゃんと歌えるようになります。

ピアノは最初から正確に調律された楽器なので、

誰もが正確な音の高さを覚えられます。

音楽大学などでは全ての学科にピアノのレッスンを義務付けられていますが、

正確な音高で一人で旋律と伴奏を演奏するピアノは

音楽の勉強の基礎力のために欠かせません。

3の「和声感」は、ハーモニーを感じる感覚です。

以前Aちゃんに

「ハ長調の「カエルの歌」に主和音の分散和音で伴奏をつけてごらんなさい。」

と言うと、「ドミソミドミソミ」で弾き始めました。

すると、なんとなく心地が悪い、変だなあ…

という風に首をかしげてしまいます。

Tくんも同じ弾き方で始めましたが、

2つ目の音ですぐに手を引っ込めて、

「うーん、変だなあ」と考え込んでしまいました。

これは、メロディの「ドレミファミレド…」と、伴奏の「ドミソミ…」が

2度音程の不協和音になってしまうからです。

なんだかきれいじゃない、と感じたのはここです。

ガラスのコップに水を入れて、

そこにスポイドで青や黄色、赤のインクを落としていくと、

きれいに混じり合って、

明るい虹のような色の模様がコップの中にできます。

けれどもここに黒を混ぜると、

急に全体がどんよりと濁ってしまいます。

和声とはそういうものです。

相対音感やこの和声感、

来月お話しする機能感、強弱、音色などに対する感覚は

小さい時からクラシック音楽をたくさん耳にして育てていくと、

絶対音感よりもはるかに実際の演奏を高めてくれる力になります。

クラシックでないとダメなの?アニメやゲーム音楽、Jポップじゃダメなの?

とよく聞かれますが、

それらの音楽は音楽的感性よりも、

人に強い刺激を与えることを優先して作られているものが多いこと、

必ずしも絶対音高を守った音になっているとは言えないことが大きな違いです。

アニメやJポップばかりを聴いていると、

クラシック音楽になかなか馴染めません。

それはちょうどインスタント食品などの濃い人工的な味に慣れてしまうと、

海藻や魚でとったおだしや、素材の味を生かした料理は薄味で頼りなく感じ、

本来の美味しさを味わえなくなるのと似ています。

逆にクラシックをよく聴いたり耳なじんでいる人は、

ポップスでも演歌でも、

ジャンルを問わず一流の作品を聴き分けることができます。

そうして様々な音楽を楽しめるのです。

私たち人間は、音楽を耳だけで捉えているのではなく、

意識・無意識を含んだ身体全体で感受しています。

小さな頃から遊びの中で、毎日の生活の中で、

クラシック音楽に親しんでいることが

音感を育てるためにとても大切です。

音感とは限られた才能というよりも、「音の記憶の蓄積」なのです。

                          (ニュースレター7月号から抜粋)

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