ピアノは脳を育てる〜脳の発達とピアノ
テレビで人気を博しておられる脳科学者・澤口俊之先生の講演
「幼い頃からのピアノが脳を育てる」に行ってまいりました。
澤口先生といえばピアノと脳の関係についての研究で、とても有名ですね。 先生の講演のお話をご紹介しましょう。
現在学術研究上で実証されている限りにおいて、
あらゆるお稽古事—スポーツ、ダンス、演劇、英会話、ピアノ以外の楽器レッスンなどの中で、ピアノレッスンが最も脳の発達を促すことが明らかになっています。
5歳から9歳ごろまでに1日10分毎日ピアノ練習を継続すると、
2ヶ月で脳の発達が大きくアップすることがわかっています。
(生徒のみなさんはこれを読んで10分でいいんだ~♪と思っちゃダメですよ!)
ピアノは右脳と左脳をつなぐ脳梁を太くし、
思考と直感、理論と想像力のバランスをよくします。
ピアノが「脳トレ」とし脚光を浴びているのは、
左右の手で違う動作をするからだ、と思われがちですが、
実はそれだけではありません。
秘密はピアノの弦が生み出す倍音にあります。
アコースティックのピアノが生み出す音は最大30000ヘルツです。 人間の耳が捉えられる音は20000ヘルツまでです。 人間の耳にとらえられない音はムダになってしまうのでしょうか? 実はピアノは聞こえる音としてとらえるだけでなく、
弦の共鳴によって生まれる倍音(周波数)を脳に感受させます。
この倍音が脳を非常に活性化するのです。 ピアノの練習は、脳の前の部分、前頭前野に特に影響を与えます。
前頭前野は、「人間性知能HQ」「一般知能gF」「情緒知能EQ」 の監督役、総合センターになっている部分です。
HQとは、
目標を達成する力
夢に向かって計画し努力する能力
問題解決能力。
想像力や適応力…
ピアノはこのHQを大きく発達させます。
学習に直結する「一般知能gF」はこの前頭前野の中央にあります。
一般知能が高くても、HQが高いとは言えませんが、
HQが高くなると一般知能も高くなるのだそうです。
前頭前野だけではなく、小脳や海馬を大きくし、記憶力・高度な言語機能を発達させます。
これらの実証から、ピアノは発達障害の予防・治療に大変効果をもたらしています。
これは大人にももちろん有効で、いわゆる「脳トレ」にとどまらず、
認知症、うつ病の予防や治療にピアノレッスンが用いられています。
東大入学ナンバーワンの私立校、東京・開成中学は20年前からこれらの研究結果に着目し、
数学の授業の1コマをピアノレッスンとして、生徒全員に受けさせています。
これらの研究はすべて生のピアノによって証明されているもので、
残念ですが、電子ピアノではこれらの効果は望めません。
なぜなら電子ピアノは弦がなく、音はデジタル化された電子音源のため、倍音が作れません。
電子ピアノでの練習では、ピアノほどの脳に影響を与える力はないのです。
2021年から大学の入試方式が大きく変わります。
今までの学力テストに、「思考力・表現力・判断力」を評価するテストが導入されます。
これを受けて、ピアノコンクールの順位やグレードテスト(優劣を競うコンクールではなく、
自分の上達度を測るシステム)の受験年数などが内申書の加点対象になります。
ピアノが4年後の国の教育・人材育成方針「真の学力・人間力作り」の一端を担うのは、
指導者として本当にうれしく、身の引き締まる思いです。
ピアノは心を育て、脳を育てる。
今日の澤口先生のお話で、ますますこの言葉への確信を強めました。
ピアノレッスンの側面のひとつとしてお読みくだされば幸いです。
ニュースレター11月号「教室便り」から